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フィアット500Xは家族持ち救いの神になる!?~嶋田智之

きっと今年の秋のどこかのタイミングでこの日本にも導入されることになるだろう、フィアット500X。今や小型クロスオーバーSUVは日本でも結構な盛り上がりを見せているわけだけど、このクルマはそのカテゴリーの中のパワーバランスのようなものを一変させる可能性があるんじゃないか? と僕は予想している。

というのも500Xは、元ネタといえるスタンダード版フィアット500と同じように、マニアでも何でもなくナチュラルにクルマ選びをする人達にも注目されるだけの個性的でスタイリッシュなルックスや雰囲気をたっぷり持ってるし、それに加えてフィアット500の世界観や歴史的なバックグラウンドがお気に入りになってる、ちょっとマニアックな気持ちを持つ人達からの興味はとっくに惹いている。特にフィアット500のオーナーでありながら家族が増えたり子供が大きくなったりして乗り換えを迫られつつあったり、あるいは家族4人がゆったり乗れないという理由で諦めたことがあったり、といった人達にとっては救いの神になるかも知れないクルマなのだ。

幸運なことにフィアットの本拠地であるトリノとその郊外で試乗することができたのだけど、ナチュラルにクルマ選びをする人達とちょいマニアックな人達では気になるところが違いそうなクルマなので、ここはふたつのパートに分けてレポートしてみようと思う。

■おっ、雰囲気いいじゃん! で選んでもだいじょうぶ

まずは、先入観も何もなしに家族で過ごすためのクルマを考えている人達へのレポートから。このクラスのクロスオーバーSUVを候補にしているということは、実用性がそれなりにしっかりと高くないと困るけど、フツーの四角いミニバンには今ひとつ気乗りがせず、スタイリッシュで個性的なクルマに乗りたい、という想いがどこかにあるんじゃないか? と思う。

ミニのクロスオーバーとペースマン、ルノー・キャプチャー、日産ジューク、プジョー2008、フォード・エコスポーツ......。なかなかの顔ぶれを見せるこのカテゴリーだけど、その中にあってフィアット500Xが持つアドバンテージは、御覧のとおり、ライバル達とは一線を画す、丸っこさの活きた独特のスタイリングだろう。どことなく人っぽくて、愛嬌もあって、ちょっぴり逞しく、何となく癒される。まさしく「フィアット500ファミリー」の血筋がそのまま再現されている感じだ。

ボディサイズは、仕様の違いでビミョーに異なるモデルもあるけれど、基本的な数値としては全長4248mm、全幅1796mm、全高1608mmで、ホイールベースは2570mm。判りやすいところでいえば、ざっくり、日産ジュークよりビミョーに大きいかも......といった感覚。その分、室内もしっかり広くて、大人4人ならヒザ周りも含めて結構ゆったり過ごせ、大人5人だとリヤシートの横方向のくつろぎ具合は乗る人の体型次第、といった感じだ。ラゲッジスペースはリヤシートを活かした普通の状態では350リッター、たためば1000リッターだから、フル乗車で2泊の旅行なんていうシチュエーションでも全く問題はないだろうと思う。

室内のデザインは、いたってシンプル。スイッチ類もゴチャついたところがなくて、どれが何のためのモノかはほとんど一目瞭然だ。フロントシートは座り心地もよくサポート性もほど良い感じ、リヤシートはフラットで少し固めなようにも思えたけれど、2時間ほど揺られてみてもあまり疲れた感じはしなかった。もちろんドライバーズシートの快適さは、それ以上。このクラスにあっては全体的に質感も高く、シートのできなどちょっとばかり高級感すら覚えたほどだった。

500Xにはフィアットもかなりチカラを入れているようで、ラインナップは実に豊富。駆動方式はFWDとトルク・オンデマンド式4WDの2種、エンジンは3種類のガソリンと1種類のバイフューエル、2種類のディーゼル、トランスミッションは5速と6速のマニュアル、6速のデュアルクラッチ式、9速のオートマティックという4種。これらの組み合わせでシリーズが形成されているのが、このうち日本に導入されることになりそうなのはガソリンエンジンのみで、140ps/23.5kgmを発揮する1.4リッターターボと6速デュアルクラッチトランスミッションを搭載するFWDモデル、そして同じ1.4リッターターボの170ps仕様と9速オートマティックの組み合わせを積む4WDモデル。そのうち今回試乗できたのは、トランスミッションこそ6速マニュアルだったけれど、日本ではメイン機種となりそうな140psの1.4リッターターボ搭載するFWDモデルだった。

これ、実はかなり好印象だった。常に大人3人乗車で移動したのだけど、発進の段階からトルクがたっぷりで粘り強くて、ごちゃごちゃした街中をゆっくり流して走るような場面でも全くストレスなし。そこからアクセルを踏んでいくと、結構元気よく加速してくれる。高速巡航でも不満を感じることなんて一切なかった。もちろんスポーツカーみたいに速いわけじゃないけれど、1.4リッターという排気量を思えば「あっぱれ!」とホメていいくらいには速いし、しかも全域に渡って扱いやすい。実用エンジンとしてはかなりレベルの高い部類だと思う。

特筆すべきは乗り心地の良さで、サスペンションが豊かに長ーく動いてくれるから、ゴツゴツした感じがない。とってもフラットな印象で疲れが少ないのだ。といって変に柔らかいわけでもなく、だから曲がるのも決して苦手としていない。ステアリングを操作するとスッと素直に向きを変えてくれて、そのフィールが結構気持ちよくて楽しい。クルマのフォルムから、右へ左へと素早くステアリングを切り返すような場面でフラつくのでは?  と考える人もいるだろうけど、そんなときにも妙な揺り返しに見舞われることはなく、見事な収まりの良さを見せる。端的に言ってしまえば、足腰の出来映えはかなりのもの。イタリアの人達は例えばそれが商用車であったとしてもスポーティに走れないと満足できない傾向が強いけど、そういう人達が作ったクルマなのだ。鈍くさいクルマになるはずがない。

つまり500Xはしっかりとキャラの立ったスタイリッシュな雰囲気を持ち、家族で不満なく使える実用性と快適さを持ち、それに加えて「休日の職業は運転手」になりがちなお父さん(とお母さん)も運転することそのものを楽しめるような味わいを持っている、ということ。

あとは価格......ということになるのだろうけど、現地の価格から勝手に予想すると、おそらく最大のライバルとなりそうなミニのクロスオーバー&ペースマンと同じくらいか、あるいはもうちょっと手を出しやすいレベルになりそうな感じ。なので、その部分に納得できる人であれば、僕は「これいいじゃん!」というインスピレーションで選んでしまっても、大きな過ちにはならないんじゃないか? とすら思ってる。それくらい、出来映えはよかった。

■その乗り味は、まさしくチンクエチェント! の世界観

さて、ここから先は「フィアット500」を本国同様に「チンクエチェント」と呼ぶのが当たり前の、ちょっとマニアなチンク・ファンのためのレポートだ。

500Xに関してファンの人達が気になっているのは、果たして乗り味はチンクエチェントらしいのか? ということだろう。特別にスポーティな仕立てでもないのに走らせてみるとキビキビスパッ! と爽快に走ることのできる現行チンクエチェントの楽しさと気持ちよさは、格別のものだと僕も思う。

結論から申し上げるなら、4枚+1枚のドアとたっぷりした居住空間を持つクルマなのに、その乗り味は見事なまでにチンクエチェントの世界観に収められていると言える。

詳しい人はプラットフォームが兄弟ブランドとなったクライスラーのジープ・レネゲードと多くの部分を共有する新設計であることも先刻御承知で、まるでアメリカンSUVのような乗り味を想像していた人もおられるだろうけど、実はこのプラットフォーム、開発自体はイタリア主導で行なわれているのだ。

だからフットワークは、きっぱりとフィアット風味。この種のクルマとしてはかなり軽快で、素早く素直に曲がってくれる。もちろん速度が高くなればそれなりのロールは見せるけど、動きそのものがとても自然で解りやすく、そのときの粘り腰なフィールなんてフィアット以外のナニモノでもない。ハンドリング、なかなか楽しいのだ。

エンジンも低速トルク偏重型というわけじゃなく、その気になればレスポンスよく軽やかな吹け上がりを見せて、気持ちよくスピードを上げていく。トルクはどの領域からでも素直に立ち上がっていく性格だから、郊外のちょっとしたワインディングロードも結構いいペースで楽しむことができたし、高速道路では自慢したらいけないくらいの速度域をキープして突き進むこともできた。

この爽快さ、この楽しさ、退屈知らずのフィーリング。その乗り味は、間違いなくチンクエチェント一族のものである。

ここでマニアな人へひと言だけ余計なことを申し上げておくとしたら、「こんなデカいのはチンクエチェントじゃない」という言葉はナシだからね、ということ。デカいのは当たり前。だって、これはより多くの人がチンクエチェントの世界観を楽しめるよう、実用性をたっぷりと確保すべくあえて大きく作ったチンクエチェントなのだから。家族みんなが等しく楽しめるチンクエチェントって、それはそれでいいと思わない?

(文・嶋田智之)

●フィアット|日本
http://www.fiat-auto.co.jp/

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